この記事の監修

稲葉

福岡県出身
所属:イナバ白蟻 / 稲葉矢株式会社
資格:しろあり防除施工士・木材劣化診断士・ペストコントロール1級技術者

天然系薬剤をシロアリ対策に選ぶ大きな理由は、ヒトへの安全性ではないでしょうか。

できるなら化学合成物質が含まれていないものを選びたいのは、施工を行う者としても同じです。

しかしながら、木材食害虫の防虫剤が求められる性質・性能には対象昆虫に対する効果に加えて、予防効果を発現するために木材中や床下土壌中での耐候性および残効性も含まれます。(飯島倫明:木材保存剤)特に、シロアリのように家屋を著しく食害することがあり、防災面への影響のある食害害虫に対しては、薬剤効力の安定性が重要となります。

下記の記事では、ある天然薬剤の抗蟻試験を行ったデータがあります。

天然植物性薬剤 青森ヒバ精油液の抗蟻試験:西日本シロアリ防除 
https://shiroarikujyo.net/blog/naturalmedicine-test

初めの試験では殺蟻効果が認められたものの、3日後に行った試験では殺蟻効果がゼロになっています。
これは、使用した天然成分が紫外線に分解されやすい特徴から、急激に殺蟻効果がなくなったものと考えられます。

この試験で分かるように、シロアリ対策で使用する薬剤は、一時的な殺蟻効果だけではなく、施工後の「耐候性」や「残効性」が重要であり、
天然成分のシロアリ防除剤を選択するときには、実環境における効果の持続性についてを留意することが必要です。

イエシロアリのように短期間に甚大な被害が及ぶことのあるシロアリの地域では、天然系薬剤の使用には薬剤の耐候性や残効性について確認をし、

場合によっては、ベイト工法の併用や、防蟻施工後の定期的な点検を行うことを検討しましょう。

参考文献
土井正(1997):シリーズ「阪神・淡路大震災に学ぶ」木造住宅に被害と対策. 繊維製品消費科学, 1997年38巻1号, p14-22.
酒井温子(2008):ヒバ精油およびヒノキチオールの木材防腐性能. 奈良県森林技術センター研究報告37号, p49-53.
田中裕美:木材の劣化,木材保存学入門【改訂3版】, p75-76. 公益社団法人日本木材保存協会, 東京, 2012年.
飯島倫明:木材保存剤,木材保存学入門【改訂3版】, p114-115. 公益社団法人日本木材保存協会, 東京, 2012年.