新築から5年が経過すると、シロアリ防除剤の薬剤の効力が逓減し、シロアリ対策を行う時期に差し掛かります。その際、多くの方々は、できれば追加の出費は避けたいと考えるのが普通です。
しかし、シロアリ対策の必要性については、実際に被害に遭わないと気づかないことが多いのも事実です。この記事では、実際の被害事例を挙げて、シロアリ対策がなぜ重要なのかを説明します。
私は多くのシロアリ被害現場での駆除を経験してきたしろあり防除施工士です。残念ながら、一部の被害者は著しいダメージを受け、大規模工事や家を建て替える必要に迫られたこともあります。そのため、家の所有者としては、シロアリ駆除と予防の重要性を正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。この記事を読むことで、シロアリ対策の必要性についての理解が深まるでしょう。
シロアリの住宅被害による4つの影響
シロアリ駆除の被害は家屋にとって非常に深刻な影響を及ぼすことがあります。
その影響は、建物への影響、経済的な影響、生命への影響、近隣への影響の四つに分けることができます。
以下にその主な影響を挙げます
1.建物への影響
構造的損傷
シロアリは木材を食べて生活するため、家の構造部分、特に柱や梁などの重要な支持部分を弱らせることがあります。これが進行すると、建物の安全性が著しく低下し、最悪の場合は建物が崩壊するリスクもあります。
家の傾きによる二次被害
土台や柱、梁などの食害が進行すると、家のバランスが傾き、戸の締まりが悪くなったりといった現象が現れます。
さらに、被害が進行すると外壁などの亀裂が発生し、そこから雨水が入り込み木材の腐れによる劣化やシロアリの被害を助長し、
建物の被害をさらに進行させてしまう結果となることがあります。
2.経済的な影響
修復費用の増大
シロアリ被害は初期段階で発見し対処することが難しいため、見つかった時には既にある程度の被害が進行していることがほとんどです。被害状況によっては、修復に多額の費用がかかることがあり、経済的負担が大きくなります。
不動産価値の低下
シロアリ被害を受けた建物は、その価値が低下します。将来的にその建物を売却または賃貸する際に、価値の低下は重要な問題となり得ます。
ライフプランへの影響
シロアリ被害を長期間放置することは、建物の強度を著しく低下させ、大規模な修復工事が必要になることがあります。この結果、ライフプランに大きく影響を及ぼすことがあり、不動産価値の低下などを含めると、老後の計画にも影響を与える可能性が考えられます。
3.居住の安全性への影響
落下事故のリスク
地震災害時のリスクを高める
シロアリによる住宅の木材強度の低下は、地震時の家屋倒壊の一因となることが知られています。1995年の阪神淡路大震災に関する産経新聞夕刊の記事「大震災の死体検案報告」によると、震災時における犠牲者の約90%が自宅で亡くなっており、その多くは倒壊した家屋による胸や腹の圧迫、窒息死が原因だったと報告されています。
大阪市立大学の土井正氏による阪神・淡路大震災の実態調査では、蟻害腐朽のない全壊家屋での生存者は約8割だが、蟻害腐朽のある全壊家屋では生存者が約2割と報告されています。この違いは主要構造部材に蟻害腐朽のある建物では、一瞬の瓦解によって生存空間が残らずに人的被害が拡大するためと言われています。
参考文献
土井正(1997):シリーズ「阪神・淡路大震災に学ぶ」木造住宅に被害と対策. 繊維製品消費科学, 1997 年38 巻1 号, p14-22.
耐震性の低下: 現代の建築基準では耐震性が重視されていますが、シロアリの被害を受けた建物は、元々の耐震設計の効果が減少します。これにより、比較的小さな地震でも重大な損傷を受けるリスクが増大します。
二次災害のリスク増加: シロアリ被害により弱化した建物は、地震による揺れでさらに損傷を受けやすく、二次災害のリスクが高まります。
避難・救助活動の妨げ: 建物がシロアリ被害で弱体化している場合、地震発生時に避難や救助活動を妨げる可能性があります。倒壊や部分崩壊が起きると、居住者の安全な避難が難しくなり、救助隊の活動にも障害をもたらす可能性があります。
4.近隣への影響
羽アリの飛来
シロアリ被害が進行すると、春先や梅雨時期に羽アリとなって巣別れをする習性があります。その時に、大量の羽アリが近所に飛んでいくことで、近隣住民との関係が悪化することがあります。
シロアリ被害の事例
ここからは、実際に私が経験をしたシロアリ被害の現場の事例について紹介をします。
コンクリート基礎でのシロアリ被害について
以前、私が新たに取引を始めた工務店の社長であり1級建築士でもある方は、ベタ基礎であればシロアリの侵入を防げるという考えを持っていました。新築住宅のシロアリ予防施工の打ち合わせ時、私が工事のタイミングについて説明しても、「ベタ基礎なら必要ないでしょ?」と半信半疑の様子で、事前に約束した工程の段階での連絡を怠り、施工が難航しました。その後、大学と薬剤メーカーの共同研究による防蟻工事の実験データを提示し説明を行いましたが、彼はシロアリ予防の必要性を真に理解していなかったようで、防蟻工事のタイミングでの連絡を何度も忘れていました。
取引開始から約1年後、その社長から息子の家がシロアリ被害に遭っているとの相談を受けました。調査に行くと、実は社長自身の家が被害に遭っており、ベタ基礎であるにも関わらずイエシロアリの被害が確認されました。この経験を通じて、彼はベタ基礎であってもシロアリ対策が必要であることを実感したようですが、自分の家が被害に遭うまで気づかなかったのです。私は彼に対し、経験に基づく助言をしましたが、多くの人がシロアリ被害に遭うまでは「ベタ基礎だから大丈夫」と誤解しているようです。
ベタ基礎は地面と直接接触しており、シロアリにとって侵入の障壁になり得ます。しかし、基礎の亀裂や隙間、配管の周辺など、コンクリートの裂け目や穴からシロアリが侵入する経路となり、ベタ基礎のシロアリ被害が発生しています。
ベタ基礎は一定の保護を提供するものの、経年によってコンクリートの隙間は徐々に拡がっていきます。シロアリ被害を完全に防ぐものではないため、予防と定期的な検査が必要です。
羽アリを6年間放置-1000万円以上の修復費
私のところには、羽アリの発生から数年が経過してから駆除を依頼されてこられる方も多くいます。
初めに羽アリを発見し、インターネットで検索してシロアリであることが判明しても、シロアリ駆除業者に対する悪いイメージが原因で積極的になれない方が多いようです。
今ご覧のウェブサイトなどからの情報や、知人、お客様、取引先からの紹介で、業者に対して不安を感じている方々から依頼が寄せられます。
シロアリ被害の長期間の放置は、時には、建物の深刻な損傷により、大きな修復作業が必要になることもありますので、
シロアリの被害に気づいたり、シロアリについて気になっている方は、この機会にぜひ相談してください。
さいごに
シロアリの被害が生活に及ぼす影響は多岐にわたります。たとえ数千万円のローンで建てた家であっても、シロアリに侵入され、被害が放置されると、柱や梁が深刻に損なわれ、家の美観や耐久性にも悪影響を及ぼします。これにより、シロアリの駆除だけでなく、家の修復にも高額なコストが発生します。そのため、家の安全と経済的負担を最小限に抑えるためには、シロアリの被害を早期に察知し、迅速に駆除することが重要です。
私の経験では、シロアリ被害に遭遇した多くの方々は、シロアリ対策の重要性を認識していないことが多いです。たとえ対策の必要性を知っていても、「自分の家は大丈夫だろう」と思っている人が多く、「まさか自分の家にシロアリが」という状況に陥って初めて対策の重要性に気づくことがあります。どの家にもシロアリ被害のリスクは存在します。
家を建てた後は、長期間快適に住むために定期的なメンテナンスが必要です。これには、室内の換気、屋根や壁の塗装など、雨漏りを防ぐための作業が含まれます。同じように、シロアリが誤って貴重な家を食害対象にしないよう、定期的なシロアリ対策も重要です。
シロアリ駆除の現場で、私は「シロアリは気になっていたが、どの業者に頼むべきかわからなかった」という方々に数多く出会いました。駆除の匠として、このような方々が安心してシロアリ駆除を依頼できるような世の中を目指しています。シロアリ対策について不安を感じる方は、ぜひご相談ください。
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