ジンサンシバンムシは、世界中に広がる害虫であり、貯蔵穀物や乾燥した食品への加害が多くみられる害虫として知られていますが、食品業界において被害が多く報告されています。英名でdragstore beetleと名付けられるように、生薬などに大量発生し、経済的損失を与えることがしばしば問題となっています。

この記事では、ジンサンシバンムシの生態や特徴、駆除方法について解説しています。また、ジンサンシバンムシの系統や殺鼠剤も食べることのできる食性の広さの秘密についてなども紹介します。

ジンサンシバンムシの驚くべき生態と特徴

ジンサンシバンムシは、食品やタバコに被害を与える害虫として知られており、その生態や特徴には驚くべき点が多く存在します。

ジンサンシバンムシは2系統に分かれる

ジンサンシバンムシは、食性の違う2系統がある(Azan,1954)と報告されています。
穀粉系統とタバコ系統と言われ、穀粉系統の成虫は粉タバコにはわずかしか産卵しないし、タバコ系統の成虫は小麦. 粉には全く産卵しない(1978,吉田敏治)と言われています。

解毒や微生物との共生による広い食性

ジンサンシバンムシは幼虫のみが食害します。
主な被害対象となる食品は、菓子や香辛料など多岐にわたり、
幼虫は鉄以外は何でも食べると言われているほど、広い食性が特徴です。
これは、ジンサンシバンムシの後腸内に微生物が共生することによりビタミンBがない食物でも成長ができること、高い解毒機構を持っている(1978,吉田敏治)ことの影響が考えられます。そのため、他の虫が摂取できない有毒物も餌にすることができ、タバコシバンムシと並んでタバコを餌にすることが知られています。また、ネズミを駆除するための毒餌「殺鼠剤」の中でもジンサンシバンムシが繁殖していることも報告されています。

ジンサンシバンムシの成虫は赤褐色の体を持ち、体長は2-3 mm程度です。日本をはじめ世界中で確認されています。

ジンサンシバンムシの特徴
分類:昆虫網コウチュウ目(鞘翅目)シバンムシ科
学名:Stegobium paniceum
英名:drugstore beetle
体長:成虫で1.7-3.6mm(成熟した幼虫で~4mm程度)
体色:濃い赤褐色
体毛:背面に黄褐色の微毛が多くある
光沢:無し
飛翔:よく飛翔する
活動期:
寿命:雌の産卵後の寿命が3~5週間と異常に長いのが特徴 
  (卵の期間は夏季で約10日 幼虫の期間40〜45日 蛹期間は3.2〜16.3日発育零点13℃、※幼虫で越冬するため、長い個体では半年以上、生息日数は温度湿度によって大きく変わる。)
人間への影響:
ジンサンシバンムシ

タバコシバンムシは、畳を食害しますが、ジンサンシバンムシは畳への食害は知られていません。
ジンサンシバンムシは、木材や書籍を加害するため、文化財などの重要書類の保存には注意が必要です。
また、食性が広いため、屋外では鳩の巣などで繁殖し発生源となることが知られています。

菓子から香辛料、昆虫の死骸や殺鼠剤まで!驚愕の食害

ジンサンシバンムシが与える食品被害は、菓子や香辛料だけでなく、パンやビスケット、小麦粉など幅広い食品に及びます。特に袋詰めされた食品は、包装に破れや隙間があると、気づかぬうちに侵入され、食害が進む危険性があります。

対策:ジンサンシバンムシを駆除・予防する方法

基本的な対策

清掃・密閉保管・封鎖・モニタリング

ジンサンシバンムシの発生原因は、

元々の製品や材料への混入を除くと、

外からの侵入
 ・人の出入り
 ・飛来

が考えられます。

したがって、ジンサンシバンムシによる食品被害を防ぐための対策としては、侵入をさせてないことと、生息環境を作らないことが基本です。
つまり、建物の「隙間」を無くすことや、「清掃」や食品を「保管」する際の対策が重要で、適切な環境整備が求められます。

とにかく、食品を密閉保存し、環境を清潔に保つことが基本です。トラップ調査によるモニタリングを行い、早期発見、早期対策により被害の拡大を防ぐことも有効です。適切な対策を講じることで、家庭や食品工場における被害を最小限に抑えることができます。

世界各地でのジンサンシバンムシの生息

ジンサンシバンムシはアメリカやヨーロッパ、アフリカ、アジアなど多くの地域で確認されており、寒冷地を含めた世界中に分布しています。紀元前2500年前のツタンカーメンのお墓からもジンサンシバンムシが発見されたことから、商人などの人の運搬によって世界中に拡がっていったことが考えられています。

ジンサンシバンムシの二次被害

ジンサンシバンムシ自体は毒は持たないため害はありませんが、大量に発生すると、シバンムシアリガタバチが寄生し、人への刺傷被害が生じることがあります。

まとめ

ジンサンシバンムシは紀元前2500年前から人の生活環境の中で世界中に存在している食品害虫の一つです。ジンサンシバンムシの発生を予防するには、日常の清掃、保管方法が重要です。そして、必要に応じて、フェロモントラップを利用したモニタリングを行うことで、早期発見早期駆除で被害拡大を防ぐことができます。

参考文献:ジンサンシバンムシの生態と防除