コクヌストモドキは、食品害虫の一種であり、日本全土に分布しています。
粉体食品を好み、小麦やカップ麺、シリアル、パスタ、ナッツ、などの穀粉を好みます。米などの穀物を加害する他の甲虫の食害跡に溜まった穀粉に、コクヌストモドキが発生する二次被害もみられます。
コクヌストモドキは、発がん性を誘発する可能性や寄生虫(線小条虫)の中間宿主となることもあると言われているため、衛生管理には注意が必要です。
この記事では、コクヌストモドキの生態や特徴、被害と防除方法を紹介します。
コクヌストモドキの生態と特徴
コクヌストモドキは粉体食品を好み、食品に損害を与え、穀物貯蔵庫、精米工場や、お菓子などを製造する製粉工場などでの発生が問題となっています。
学名:Tribolium castaneum
英名:red flour beetle
体長:3-4mm(幼虫の体長は6-7mm)
体色:赤褐色(幼虫は淡黄色)
光沢:少ない
飛翔:飛翔する
頭部:点刻が密布している。
触覚:先端から3節が大きい
卵から成虫になるまでの期間:約50日(気温27℃環境下)夏季は一ヶ月ほどで成虫に
寿命:成虫は1年(長いもので3年前後
生涯の産卵数:300~500個/雌1匹
活動期:主に春から秋の間
人間への影響:発がん性(キノンの分泌)、寄生虫(腹痛、不眠など)
コクヌストモドキは赤褐色の体をしており、光沢が少ない見た目をしています。
名前と形の似たヒラタコクヌスドモドキがありますが、種の見分け方としては、触覚と目複眼の距離によって区別することができます。
ヒラタコクヌストモドキの触覚はゆるやかに小さくなるのに対して、コクヌストモドキの触覚は「先端の3節が大きい」ことが大きな特徴です。
また、ヒラタコクヌストモドキの複眼の距離は広いのに対して、コクヌストモドキの複眼の距離は狭いことも種を区別する際のポイントです。
体長3-4mmの成虫
コクヌストモドキの成虫は、体長が約3-4mm程度です。幼虫は淡黄色で、成長すると6mm程度の体長になります。
米や穀物を飼料とする習性
コクヌストモドキは粉体食品の中で発生することが多いため、食品管理には注意が必要です。これらの食品の中で成虫が卵を産み、成虫、幼虫共に小麦粉や米などの穀物の粉、菓子類、パン類、麺類を食べて成長します。製粉や貯穀施設での被害が多く報告されており、発生をさせないための対策と発生を確認した場合の早期の駆除対策が重要となります。
日本を含む世界各地に分布
コクヌストモドキは、世界中で穀物等の貯蔵食物を主とした粉体食品に被害を与える食品害虫です。特に貯蔵穀物の重要な害虫とされています。日本をはじめとする世界各地に分布しています。日本では、主には気温の高くなる春から秋にかけて活動をします。
コクヌストモドキの予防対策
発生場所
小麦粉や米びつ、お菓子などが発生源となることが多く、食品加工工場などの他、飲食店や一般住宅でも発生がみられます。
対策
コクヌストモドキが発生する場所は、穀物や食品の保管場所が主です。
・食品は密閉状態で保管する
・床などに粉を残さないようにこまめな清掃を心がける
倉庫や製粉工場での発生
倉庫や製粉工場では、穀物や飼料など食品が積み重なることが一般的で、繁殖に適した環境が整っています。
特に製粉工場では、小麦粉や米粉などの粉類が利用されるため、コクヌストモドキの餌となる餌が豊富に存在します。さらに、倉庫の保管や運送中に虫の侵入や繁殖が起こることもあります。
そのため、倉庫や製粉工場では、定期的な清掃を心がけることの他、フェロモントラップを活用したモニタリングを行い、生息がみられた場合は、早急に対策を行うことで、被害の拡大を防ぐことができます。
家庭での発生
家庭では、食品を保管する場所など、密閉した容器を使用し、清掃を心がけて、コクヌストモドキの発生を防ぐことができます。
コクヌストモドキによる被害
コクヌストモドキによる被害は、食品への被害をはじめ、その他の害も懸念されます。食品への被害では、穀粉や飼料などの食品が汚染されることがあり、それにより原材料の品質低下や販売機会の喪失などの、企業にとっては経済的損失に繋がります。
健康被害への影響
発がん性(キノンの分泌)
コクヌストモドキが発生して不快臭がする場合では、キノンが分泌されている可能性があります。キノンを含んだ小麦粉は臭いの他に、ピンク色に染まる特徴があります。ベンゾキノン類は、哺乳類に対して毒性、発がん性を有しています。コクヌストモドキが混入することによってキノンが食品に含まれ、その食品を人が摂取することが懸念されています。
寄生虫(腹痛、不眠など)
コクヌストモドキが生息する食品工場や倉庫などにネズミが生息している場合、ネズミの内部寄生虫の中間宿主となることがあります。ネズミの糞には、腸内寄生虫(線小条虫)やその卵が混在していて、ネズミの糞を摂食したコクヌストモドキでは、その体内で寄生虫(線小条虫)の幼生体が成長します。したがって、コクヌストモドキが食品に混入した場合、
ネズミの体内にいる寄生虫が人の小腸へと媒介され寄生し、下痢などの症状を引き起こすことがあります。
駆除・防除方法の一覧
コクヌストモドキの駆除・防除方法には、環境整備、トラップの利用、殺虫剤の使用がある。具体的には、次のような方法が挙げられる。
– 環境の整備や保管方法の改善で、発生を抑制する
– トラップを利用して、成虫や幼虫をモニタリングする
– トラップを利用して、被害範囲を特定する
– 被害が確認された場所で殺虫剤を使用する
– 被害の確認された食品はすぐに廃棄処分する
トラップの利用と設置
コクヌストモドキを誘因するフェロモントラップを設置し、モニタリングや被害範囲の特定をすることができます。
化学的防除~殺虫剤の使用
適切な量を散布し、効果を最大限に高めましょう。
環境整備や保管方法の改善
環境整備や保管方法の改善は、コクヌストモドキの発生を抑制する効果があります。小まめな清掃、食品や飼料を密閉した容器に入れて保管することが重要です。
コクヌストモドキ対策のまとめ
コクヌストモドキの駆除・防除方法としては、トラップの利用、殺虫剤の使用、環境整備が挙げられます。効果的な対策を講じるためには、これらの方法を適切に組み合わせることが重要です。今後もコクヌストモドキによる被害がないよう、定期的な対策を行いましょう。自社で対策を行うことが難しい場合は、専門家に相談することも検討してください。
コクヌストモドキの低温抵抗性:https://www.maff.go.jp/pps/j/guidance/r_bulletin/pdf/rb007-002.pdf