トコジラミは、その名前に「シラミ」という名がついていますが、
ケジラミ、アタマジラミなどの「シラミ」の仲間ではありません。
トコジラミは、
昆虫の分類としてはカメムシ目に属しており、
シラミ目の昆虫とは、目レベルで違うグループに属しています。
別名で南京虫(ナンキンムシ)と呼ばれていますが、
この名前の由来は、
トコジラミは江戸時代に海外から中古の船を購入した際に日本に侵入をしてきたと言われており、
その時代で「南京」という言葉には海外から伝わってきた小さな珍しいものという意味があったからとの一説があります。
現代では、トコジラミという名前が正式な和名です。
また、人の就寝中に吸血の被害に遭うことが多いことから、英名では、「bedbug」と呼ばれています。
人を吸血する種類のトコジラミは2種類で、
トコジラミとネッタイトコジラミ(俗名:タイワントコジラミ)です。
ネッタイトコジラミは、熱帯地方に多くみられる種類です。
日本では、南西諸島にみられ、海外からの人や物資の移動がある港湾地域にみられています。
日本のホテルや旅館、一般家庭などで問題となっているほとんどの種類は、トコジラミで、主に全世界の温帯地域の生息しています。
トコジラミの成虫
体長:5~8㎜
体色:茶褐色
体型:扁平
翅:小さな前翅があるのみ(飛べない)
普段の見た目は上記のような特徴ですが、
トコジラミは、吸血すると腹部が膨らみ体長も長くなります。
また、触れるとカメムシのように悪臭を放ちます。
トコジラミの卵
形:長円刑
色:乳白色
長径:1.2㎜前後
トコジラミの幼虫
卵から孵化した直後の体長は、1.3㎜前後で体系は成虫よりもやや細長く、体色は淡黄色です。
トコジラミの生活環
トコジラミの成長過程
卵⇒幼虫⇒成虫
トコジラミは、卵から成虫までの過程に蛹を介さない不完全変態の昆虫です。
幼虫は5回の脱皮を経て成虫となります。
トコジラミの栄養源は血液のみ
トコジラミの栄養源は、血液のみで、
幼虫・成虫・雄雌関係なく、吸血ができなければ、生きていけません。
特に、幼虫は脱皮の度に吸血が必要と言われています。
トコジラミは、吸血をすると、幼虫成虫に関係なく腹部が黒くなります。
トコジラミの寿命
トコジラミの成虫は飢餓に強く、
吸血ができない環境であっても長期間生き延びることができます。
ある実験では、気温によって、トコジラミの寿命は変わり
無吸血であっても、気温13度以下の環境では、約1年間、気温10度以下では2年近く生き延びることができたとのことです。
吸血源のない空き家や倉庫などでも生き残ることができるため、中古家具などを購入する際には注意が必要です。
トコジラミは人間以外にも、犬や猫、ネズミやコウモリ、鳥などからも吸血します。
トコジラミ被害で最も悩まされるのは、「痒み」でしょう。
トコジラミに刺されると
・激しい痒みに襲われ
・皮膚に刺された跡が残ります。
昆虫学上でトコジラミが属している海外のカメムシ目の中には
人や動物から吸血して、心臓障害などを引き起こす病気を媒介する種類もいますが、
幸い、現在のところ、トコジラミに関しては、
吸血によって感染症を媒介させたという情報はありません。
但し、トコジラミを潰した時に出てくる血液を介して、
肝炎やエイズなどが感染する可能性があるとも言われています。
何故、トコジラミに刺されると痒くなるのでしょうか?
それは体内で、アレルギー反応が起きているからです。
トコジラミは、針状の口器から吸血するときに、体内に唾液を注入します。
この唾液に対してアレルギー反応を起こし、激しい痒みが生じるのです。
日本でのトコジラミ被害
江戸時代に、海外から中古船を購入したことが原因で港を中心としてトコジラミの被害がみられたと言われています。
昭和の時代には都市部を中心に家庭でのトコジラミ被害がみられていたと言われますが、東京オリンピック頃を境に被害は減少して、日本でのトコジラミ被害は、1970年代にはほとんど見られなくなりました。
しかし、2006年頃から日本でもトコジラミ被害が増加するようになり、
東京都内だけでの保健所に寄せられたトコジラミの相談では、
1990年代には年間に20件も満たない程だったのが、2012年には342件にも増加しました。
これは、1990年代初期と比べると、20倍以上、2000年代初期と比べても、10倍以上のの被害件数となっています。
トコジラミ被害の範囲
トコジラミ被害は、海外からの観光客が出入りする宿泊施設を中心にして発生している傾向があります。
トコジラミ被害の見られる主な場所
・ホテル・旅館・ゲストハウス・シェアハウス・カプセルホテル等の簡易宿舎
・寮・サウナ・スーパー銭湯・映画館・インターネットカフェ
・住宅(集合住宅・一戸建て)・病院医療施設・福祉施設