光触媒とは?

光触媒とは、光を吸収して触媒作用を示す(化学反応を促す)物質の総称です。
光触媒に光が当たると酸化還元反応を促進することから、有機物や細菌を分解することができます。
例えば、光触媒でコーティングしている箇所に、太陽や蛍光灯などの光が当たると、その表面で強力な酸化力が生まれ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去することができます。
光触媒には、「空気の浄化」「水質の浄化」「抗菌」「防汚」の4つの機能があり、特に身近なものでは、屋内の空気清浄機、脱臭機やエアコンのフィルターに光触媒処理を行い、光(紫外線)を照射して「空気浄化」させるなどにも活用されています。
また、「抗菌」作用をもつ光触媒加工されたタイルが、病院、老人ホーム等で利用されています。

ここでは、光触媒の仕組みについて詳しく紹介したいと思います。

光触媒の原理

photocatalyst
光触媒の代表的な材料の二酸化チタンは半導体です。半導体とは、良導帯(金属のように電気をよく通す素材)と絶縁体(電気を通しにくい素材)の中間の素材のことです。電気とは電子の移動のこと、半導体は、通常は電気を通しません。実は、光触媒のヒミツは、この「電子の移動」にあります。

光触媒による分解の流れ

①光触媒に紫外線が当たると電子が飛び出す

光触媒(二酸化チタン)に光(紫外線)が当たると、光が当たった表面の電子を放出します。
このときに、電子が抜け出た穴は正孔(ホール)と呼ばれており、プラスの電荷を帯びており、放出した電子はマイナスの電荷を帯びています。

②OHラジカルと活性酸素の出現

正孔(h+)は強い酸化力をもち、水中にあるOH-(水酸化物イオン)などから電子を奪います。このとき、電子を奪われたOH-は非常に不安定な状態のOHラジカルになります。
一方飛び出した電子は、O2と結合して活性酸素(O2-)を発生させます。

③「OHラジカル」や「活性酸素」が有機物の結合を分断!

OHラジカルは強力な酸化力を持ち、近くの有機物から電子を奪って自身が安定しようとします。OHラジカルから電子を奪われた有機物は結合を分断されます。
このようにOHラジカルや活性酸素によって、様々な有害化学物質が分解され、最終的には二酸化炭素や水となり大気中に発散していく、これが光触媒の原理です。

電子の放出(光触媒効果)には「400nm以下」の紫外線の光が必要

光(紫外線)のエネルギーで電子を放出!

半導体である二酸化チタンは、光のエネルギーを受けることによって、自らが高エネルギーの状態となり、光が当たった表面の電子が飛び出します。
この時に、光のエネルギーが十分に高ければ、価電子帯(電子が通常存在する領域)にあった電子(e-)は、価電子帯と伝導帯のエネルギーの差を越えて、一気に伝導帯(電子が自由に動いて電気を伝えることができる領域)まで飛び上がります。(これを励起といいます)

価電帯:絶縁体や半導体において、価電子によって満たされたエネルギー帯のことです。(価電子帯とは一番外側の電子の軌道)
伝導体:一部分のエネルギー準位しか電子によって満たされてなく、自由電子が移動できるエネルギー帯です。
禁制帯:価電子帯と伝導帯のあいだにあるギャップ。絶縁物ではこのエネルギーギャップは非常に広く、半導体では比較的狭い。

光のエネルギーとは紫外線の波長で決まる!(400nm以下)

光のエネルギーとは光(紫外線)の波長と考えられています。
励起(価電子帯にあった電子が価電子帯と伝導帯のエネルギーの差(バンドギャップエネルギー)を超えて、伝導体まで上がるほどエネルギーレベルが上昇すること)には、紫外線の波長が400nm以下である必要があります。

酸化チタンのバンドギャップエネルギーは3.2eVであるため、

「 光のエネルギー[eV] ≒ 1,240÷波長[nm] 」の式で計算すると、

光触媒(二酸化チタン)が受ける光のエネルギーは、紫外線が400nm以下の波長である必要があります。

紫外線とは?

紫外線(UV)とは、電磁波の一種で、人の目に見える光(可視光)より波長の短い光です。
可視光より波長の長い光は赤外線と呼ばれます。

電磁波のうち、ヒトの目で見える波長を可視光と呼ばれます。
可視光線に相当するのは、下(紫色)が360~400nm(ナノメートル)、上(赤色)が760~830nmの波長の電磁波です。

紫外線には、
UV-A(380~315nm)、
UV-B(315~280nm)、
UV-C(280nmより短波長側)の3つに分類されます。nmは10億分の1メートル

光触媒を活用するには?

太陽の光には約3%の紫外線が含まれています。蛍光灯の光にもわずかに紫外線がありますが、白熱電球の光には紫外線はありません。
光触媒のほとんどは紫外線の領域で働きますので、光触媒による反応を進めるためには、太陽光だけでなく、紫外線領域の光を放出するブラックライトが使われています。

LED照明は光触媒に利用できるの?

LED照明には紫外線をほぼ照射しないタイプと紫外線を含むタイプとがあります。
LEDは設計でさまざまな波長を出せるので、紫外線のみを出すLED (UV-LED) では、光触媒との組み合わせによる空気清浄器の光源用等に使われています。

光触媒の弱点は紫外線でしか反応しないこと

ただし、市販されているLED照明の多くは、ほぼ紫外線を含まず、紫外線量は蛍光灯の約200分の1と言われています。
LED照明は、被照射物への負荷が少ないため、美術館など施設の展示品のライトアップに用いられたり、熱を持ちにくいことから、店舗のショーケースなどにも利用されています。
また、昆虫には走行性といって紫外線に反応して集まる習性がありますが、紫外線の量が少ないLED照明は、店舗・施設の害虫の飛来対策としても利用されています。

このように市販されているLED照明のほとんどは、紫外線を含まないことをメリットに活用されている反面、
屋内の生活環境下での弱い光(紫外線)では光触媒の効果を満足に発揮ができません。

従来の光触媒は、画期的な発見ではありましたが、弱点も多く実用化が限られていました。

光触媒の弱点を克服

そこで、紫外線の少ない室内の光の明るさで光触媒の効果が得れるように、光触媒に少量の不純物を加えて、室内の蛍光灯やLED照明の下でも光触媒による反応が進むものを用いて、住宅の内装コーティング材料として実用化されています。

現在では様々なメーカーが室内の光でも効果が発揮できる光触媒を商品化して、消臭・抗菌・抗ウィルスを目的とした施工を行っています。

「酸化チタン」と「二酸化チタン」は同一のもの

「酸化チタン」と「二酸化チタン」の組成式は同じ TiO2 です。両者は区別されずに使われています。
但し、組成式は同じ TiO2 でも、結晶構造が「ルチル型」の場合は光不活性,「アナターゼ型」の場合は光活性です。
塗料などの顔料にほとんどに用いられているのは、光不活性型のルチル型です。
光活性なアナターゼ型は、光照射によって水や有機物を分解するため、「光触媒」に用いられます。

光触媒の性質と機能

光触媒の2つの性質を利用した様々な機能

有機物や細菌を分解する

光触媒は、酸化還元反応を促進することから、有機物や細菌を分解することが可能です。

「空気の浄化」

空気中のNOxやSOx、ホルムアルデヒドなどの有害物質を除去、アセトアルデヒド、アンモニア、硫化水素などの悪臭の分解します。
市販の消臭剤のように、違う匂いで誤魔化す(マスキング)ではなく、化学反応 によって匂いの元を分解するため、時間が経っても匂いが復活することがありません。

活用例
屋内の空気清浄機、脱臭機やエアコン、家電品等のフィルターなど

「水質の浄化」

水中に溶解した汚染物質であるテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物を分解、除去します。
浄水器、貯水槽などの浄化用フィルターの一部では光触媒応用製品も販売されています。
排水処理については本格的な実用化はこれからのようです。

「抗菌「抗ウイルス」

活性酸素の強い酸化力によって、O-157、ノロウイルス、インフルエンザの他 各種感染菌等、あらゆる細菌やウイルスを死滅させます。

酸化チタンでコーティングした表面に銀や銅などの抗菌性金属をごく微量加えた「光触媒抗菌タイル」は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌-院内感染の代表的な原因菌)や
各種感染症などによる院内感染の危険性が懸念される病院、介護施設・老人ホームなどで採用されています。手術室では病原体の対策として光触媒が活躍しますが、太陽の光は入ってこないため、紫外線を発する専用の蛍光灯が取り付けられます。公共施設、待合室、トイレを始め、高度の衛生レベルが求められる食品工場や飲食店などの食品関連施設では、雑菌類の増殖抑制に光触媒機能を用いる方法が有効に利用されています。

「防汚」

酸化チタンを、外壁などの各種建築材料にコーティングすると、表面に吸着した有機物などの汚染物質が光触媒作用により分解・除去されるため汚れにくくなります。
また、トンネル照明器具のカバーガラスや蛍光灯、光遮蔽の窓ブラインドなどに広く使われています。

超親水性

光触媒には、光が当たると表面が濡れやすくなる「超親水性」という性質があります。

省エネ・ヒートアイランド対策

「超親水性」という性質を利用して、建物の外壁等を水で濡らし、省エネルギーとヒートアイランド対策に活用する研究も行われています。
また、建築物の外壁などでは、太陽光の紫外線を吸収して常に高度に親水性化されてるため、表面に各種汚れが付着しても、雨水がかかると容易に洗い流され、表面は常に清浄に保たれる効果もあります。

「光触媒」はどれも同じではない

光触媒の代名詞とも言えるのが、酸化チタンです。
通常、光触媒というと酸化チタン光触媒を指すと考えてよいでしょう。
光触媒にも様々な種類があります。

~金属酸化物~
「酸化チタン(TiO2)」
「チタン酸ストロンチウム」
「酸化亜鉛(ZnO)」
「酸化タングステン(WO3)」
「酸化鉄」

~金属硫化物~
「硫化亜鉛」
「硫化カドミウム」
「硫化水銀」

~その他の半導体~
「シリコン」

光触媒の8つの機能(セルフクリーニング機能、消臭・脱臭機能、抗菌・殺菌機能、防カビ・防藻機能、空気の浄化機能、水質の浄化機能、曇り止め機能、汚れ防止機能)

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